乃万 了

東京農工大学

東京農工大学 農学部附属広域都市圏フィールドサイエンス教育研究センター

 

主な仕事:教育研究用の乳牛の飼育、学生実験の補助など

農学部附属広域都市圏フィールドサイエンス教育研究センター(FSセンター)とは?

乃万さんが勤務しているFSセンターは、総合的学問領域である、フィールド科学の確立を目指すために設立された施設で、資源・物質循環、自然環境、野生動物保護管理、中山間地域農林業、都市型農業の5つの教育研究分野があります。
自然林、二次林、農地、都市緑地などの多様なフィールドを、フィールドミュージアム(FM)として活用し、環境科学、生物生産科学、森林科学、生態学、獣医学など広い視野と手法の融合によって、人と自然のあるべき関係を追及し、食糧・資源問題の解決、資源循環社会の構築を図るための教育・研究を行っています。
今回取材したのはFM府中。農学部のキャンパス内に広々とした農地が広がり、農作物、酪農、園芸を中心とする教育研究を行っています。都心の近郊にこんな豊かな緑や温室に咲く色とりどりの花々があるというのは素晴らしいですね。
乃万さんはここで、教育研究に使用する乳牛の飼育や、学生実験の補助の仕事に携わっています。

乳牛舎にお邪魔しました!

さて、早速、乃万さんが育てている乳牛がいる乳牛舎へ。外をのんびり眺めている牛もいれば、草を食べる牛、食後の休憩でしょうか?横になっている牛もいます。ここには毎日搾乳する乳牛が8頭いるほか、お腹に子供のいる牛が3頭います。

乃万さんは、朝夕2回餌をやります。朝は写真のようなスーダングラスという干し草、夕方はとうもろこしを発酵させたものを柵の外に用意します。牛1頭当たりで1日に30~50Kgの餌を食べるので、毎日準備をするのも、結構大変ですが、搾乳の際にこちらの言うことを聞いてくれる素直な牛にはとても可愛さを感じるとのことです。
牛は、1頭ずつIDカードのついた首輪をしていて、柵についた緑の扉にもIDが埋め込まれており、双方のIDが一致しないと、扉が開かず、牛は頭を出して餌を食べることができない仕組みになっています。つまり、他の牛の餌を横取りすることはできないということです。
これはなかなかうまくできていますね!

この牛は、なんと本日、出産予定とか。今、乃万さんにブラッシングされてとても気持ちよさそうです。出産には乃万さんも立ち会う予定ですが、毎回、無事に元気な子牛が生まれる度に感動されるとのこと。獣医学科の実習などでは深夜に採血を行うこともあり、そういった場面にも必ず立ち会います。

こちらは、乃万さんと教員の打合せの様子。乳牛の人口受精を行う日程について相談しています。こういった教員との打合せも日常的に行っています。

搾乳室へ

さて、乳牛からは、毎日朝と夕方の2回搾乳します。左の写真は、搾乳機です。まず牛を搾乳機のところまで連れてきます。乃万さんが持っているホースから出るお湯で牛の乳房を消毒した後、4本に枝分かれした搾乳機を1本ずつ手で乳房に取り付け、後は自動で搾乳です。

上についている四角い箱はオートミルクコーダーという機械で、これで毎日の乳量を計算しています。朝のほうが乳量が多く、8頭全ての搾乳をするのに、約1時間かかり、夕方は約45分かかります。大学の生産品(アイスクリームと乳酸菌飲料)で使用する分以外は、森永乳業に卸しているとのことでした。
また、毎日搾乳した乳量を、データとして蓄積しており、教員から依頼があった場合にそれらを提供することもあるそうです。

牛の排泄物って・・・

牛は動物なので、当然のことながら排泄物が出ます。これらは一体どうしているのでしょうか?
乃万さんが立っている後ろの建物は乳牛舎ですが、排泄物はそこから斜めに出ているベルトコンベヤーで右の白い円形発酵層に運ばれます。この中でおがくずと籾殻を混ぜます。下段左の土はその間に臭気を抜くためのものです。1週間経つと 下段右側の写真のように黒い砂のような堆肥になります。これをさらに1ヶ月自然乾燥させるためにトラクターやパワーショベルで、別の場所に運搬します。こうして牛の排泄物は100%堆肥となって、再び大学の農場で、有効に利用されています。

 

大学の生産品

東京農工大学では、FSセンターで生産された農作物やそれらの原材料を加工したジャム、うどんなどを、毎週木曜日の12時に開く「農工夢市場」で販売しています。
一番上の写真はそれらの加工品で、上段左から順に乳酸菌飲料、ブルーベリージャム(ゲル化剤等の添加物は一切使用していません)、味噌、下段の左側は焼酎で、右側はうどん(太さがそれぞれ違います)です。
中段の写真は、アイスクリームです。上段の乳酸菌飲料とともに、乃万さんが育てている乳牛からとった牛乳で作っています。味はミルクのほか、ゴマやモカ、抹茶の味を作ることもあるとか。とても人気商品なので、早めに買いに行かないと売れ切れてしまうそうです。
下段の写真は温室で育てられた花々です。色とりどりできれいですね。これらの花束のほか、シクラメンやパンジーの鉢植え、球根なども販売されます。
上記の商品のほか、新鮮な野菜、果物、お米などが並び、市場が開かれる日は1時間以上も前から地域の方々が並んで待っている姿を見ることができます。売り場には、実際に生産に関わった技術職員のほか、教員がいることもあり、生産物の詳しい説明を聞くことができるので、もし、夢市場に行く機会があったら、ぜひ色々たずねてみてはいかがでしょうか。