村田 真巳
東京農工大学
これまでのキャリア
採用~係員·主任時代(財務課総務係、出納係、資産係、決算係、契約係、会計係)
小さくとも“成果”を残せたのは背中を押してくれた上司がいたから
大学という組織は教育や研究を基盤にしていますが、その運営を支える職員の業務は実に多岐に渡ります。東京農工大学では定期的に部署異動があり、職務分野を超えて幅広い経験を積むことができる一方で、予算や会計といった近接領域での異動も多いです。そのため、ジェネラリストとスペシャリスト双方の視点を養うことができます。
入職から現在に至るまで、私が働く上で意識しているのは、前例や慣習のやり方に固執して仕事を単にこなすのでなく、業務の改善や新たな仕組みづくりに挑み、小さくとも確かな“成果”を残すという点になります。そうした成果の積み重ねが、自らの人材価値を高めると同時に、大学組織の持続的な成長にも貢献できると考えているからです。
若手時代に特に思い出深いのは、マクロを用いたエクセルシステムを構築し、日常業務の効率化に積極的に取り組んだことや、財務課で決算を担当していた時に、自ら提案した本大学初となる会計ハンドブックの作成です。このことは、多くの国立大学に先駆けた取り組みとなりましたし、その後、学内で法人会計を学ぶ研修が立ち上がるきっかけにもなりました。
採用から10年は、「大学運営をお金の側面から理解できた時期」でした。組織運営とお金は切っても切れない縁ですので、財務・会計系のあらゆる部署を渡り歩いた経験は、今後の異動でどの部署に配属されても地に足をつけて取り組めるという自信に繋がりました。もっとも、私が様々なアイデアや業務改善を臆せずに試みることができたのは、「責任は取るから自由にやってみろ」と背中を押してくれた上司の存在です。自らが課長になった今、同じ姿勢で部下と向き合うよう努めています。
係長時代(予算係長、評価係長、給与係長)
予算100億円の編成を担当!
小さな組織だからこそ若手も活躍できる
他の国立大学と比べると東京農工大学は規模的には小さな組織と言えます。だからこそ、入職11年目の新米係長の私に大学の予算を任せていただいたように、若手が活躍しやすい環境にあります。この予算担当部署で私は約100億円の予算の編成を担いました。メリハリのある予算配分を徹底する一方で、コンペ形式の新規予算枠を新たに創設し、各部局が主体的に業務に挑戦できるよう下地を整えました。“数字”を通じて大学の未来を形作る経験は重圧ではありましたが、とても創造的かつ刺激的でした。
続く企画・評価の係長としては、文部科学省に提出する第3期中期目標・中期計画にかかる報告書の作成や、大学の教育・研究活動等の質を担保する認証評価への対応、そして、第4期中期目標・中期計画期間へ向けた新たな目標づくりに従事しました。この期間は、「大学運営を評価の側面から理解できた時期」であり、本学独自の入試制度や研究力の高さなど、本学の強みを再発見するいい機会にもなりましたし、学内では当たり前に見える取り組みも、外部の視点から見ると新鮮で高く評価される、そんな“視点の逆転”を今回の経験を通して実感し、今も大きな財産になっています。
続く人事課では、国が推進している人事給与マネジメント改革を主導しました。これまで手付かずだった取組への対応を率先して進めた結果、文部科学省から一定の評価を受けることができたのは、その後の仕事に対するモチベーションの向上に繋がりました。同時に、“人材が育つ大学”を目指して、若手が正当に評価される人事方針の枠組みづくりにも着手しました。
係長になると大学執行部と直接関わる機会も増え始め、大学全体の運営の一端を担っているという実感が増していきます。責任は大きくなりますが、その分、仕事としての役割を全うしないといけないという意識はますます強くなりましたし、仕事への達成感や充実感も格段に高まったように思います。
副課長・課長時代(人事課副課長、経営企画課副課長、経営企画課長)
大学の自律化に向けて“前例のない”課題に挑み続ける
その後、2年前の2023年7月に人事課の副課長、翌年7月には経営企画課の副課長になると、課全体を俯瞰する立場になります。日々起こる大小さまざまな課題に対応しながら組織の方向性を整えていく。前例のない課題に挑む毎日です。
なかでも人事課では、若手職員の育成に力を入れました。私自身が若手の頃、背景も知らされず、ただ上司から与えられた仕事をこなす日々に疑問を感じていました。それまでの慣習が必ずしも最適解だとも限りません。そこで、今、大学は何を考えどう行動しようとしているのかといった、目指している方向性をしっかりと伝え、若手自身も自分事としてとらえられる場の提供をしました。そのほか、組織の活性化を期待して、大学と外部組織の橋渡し役である「コーディネーター職」の採用枠の新規設置、独自の採用試験やキャリアパス制度の刷新、そして定年の引き上げの仕組みを整える等、様々なことにチャレンジする機会に恵まれ、大きく飛躍した一年となりました。
続く経営企画課では、「J-PEAKS(地域中核・特色ある研究大学強化促進事業)」の運営を担当しています。この事業は研究力の強化と並走させて国の補助金に頼らない大学の自律化の仕組みづくりを目的とした、予算60億円の大規模プロジェクトになります。経営企画課としても私自身も、事業運営そのものが初めての経験であるため、大学全体の力を借り、試行錯誤を重ねながら、着実に前進させています。現在は、経営企画課の課長として課全体のマネジメント業務をしつつ、「J-PEAKS」の取り組みも引き続きサポートしています。
仕事は人生の大半を占めます。改めてこれまでの仕事を振り返ってみると、やるからには役割を全うして、意味のある、価値のある“何か”を必ず残すという姿勢を貫いてきました。事務職員であれ、技術職員であれ、国立大学法人での仕事は、教育や研究を陰で支えるだけでなく、大学の未来をデザインする営みそのものです。同時に大学は、常に変化し続けなければならない組織であり、事務職員の役割もまた進化を求められています。創意工夫を重ね、次世代により良い仕組みを託すこと、それこそが
この仕事の醍醐味だと感じています。
メッセージ
大学職員の仕事は、与えられた業務を単にこなすだけではなく、自ら課題を見出して解決することに面白さがあります。前例に縛られず挑戦する姿勢は、変革を求められる今の大学に不可欠と言えます。若手にも大きなチャンスがあり、意欲次第で自らが前例をつくる立場になれます。行く先々で「小さくとも成果を残す」という心持ちで臨めば、それが積み上がり大学全体の底上げに貢献できます。一緒に変化を楽しみましょう。