伊達 精也
東京海洋大学

財務部 キャンパス整備企画課
これまでのキャリア
総務課企画係など(1~4年目) 大波に揉まれながら、断片的な仕事の積み重ねの先に大きな仕事があることを知る
国立大学の構造改革をテーマにした「遠山プラン」を背景に、東京商船大学と東京水産大学が統合し、国内唯一の海洋系大学として東京海洋大学が誕生することが決まります。今から20年以上前になる2001年の頃です。
当時の私は、東京水産大学の入職3年目の若手職員で企画係に配属されたばかり。議事録や資料作成のため、統合に向けた会議の場に居合わせることができましたが、両大学の譲れない教育方針や組織への思いをいかに融合して昇華させていくのか。教育研究組織改革の難しさを肌で感じました。他にも、概算要求や設置審の資料作成など、本当に怒涛のように過ぎた一年でした。他部署との連携、段取りの効率化、そして準備の重要性など、様々な気付きをこの時期に得られたのは大きかったです。
自分自身を知る時期であり、大小問わず様々な仕事が、大学全体と複雑に絡み合っていることを意識できるようになった時期だった思います。
財務課予算係主任・決算係長(5~12年目) 他大学の職員との出会いが埋もれていた自主性を呼び覚ます
5年目に財務部財務課に異動した私は、そこからの7年間、同課で予算、決算の仕事に携わり、お金の流れから大学運営を見渡す経験を蓄積していきます。9年目以降は役職も主任、係長と上がっていき、責任のある仕事を任されていくようになります。
この期間の大イベントと言えば、国立大学の法人化です。私は、法人化1年目(2004年)に財務省主催の会計職員研修で会計制度を学び、その知識をベースに自学の財務会計制度の構築や、法人後初となる決算の一部も任せてもらうことができました。
法人化から3年くらい経った2007年頃、私は大きなターニングポイントを迎えます。予算の業務もだいぶ落ち着いていましたが、その一方で、法人化により、各大学が自律的な運営をするための専門性や企画力など新たな能力が大学職員にも求められ、自らを省みると危機感は募るばかり。そのとき、「国立大学法人等若手職員勉強会」に参加することに。他大学の職員から刺激を受け、得られた知見やつながりを大学に持ち帰り、若手職員の勉強会で互いに教え合ったり、業務に活かしたりするようになりました。現場で疑問が生じたら他大学の事例や外部のセミナー等から解決のヒントを得るというサイクルを生むことも。各室の英語表記付案内表示板の設置や決算業務の標準化や定型化など、小さなことから各部署に働きかけ全体最適を目指した業務改善にも取り組みましたが、これらはこの勉強会の効果と言えます。「学んだことを忘れることはあっても、人との繋がりは一生続く」(小山清人山形大副学長(当時)の講演での言葉)、「キャリアを常にデザインする必要はなく、節目と節目の間の漂流する時間の出来事にも意味がある」(勉強会で紹介された金井壽宏神戸大教授のキャリアデザイン論の考え方)は、今でも私の仕事やキャリアとの向き合う基礎になっています。
企画・評価課企画係長、大学改革準備室専門職員 (13~18年目) 新学部創設準備の一員に。大学で働く意義を実感 !
2回目となる大きな転機が訪れたのは2014年の頃で、新しい学部の創設が決定したのを機に、新しく立ち上がった大学改革準備室への配属になります。ここでは事務方の実務の責任者として新学部設立に向けた業務全般に関わっていきます。外国人教員の招聘、東京駅に広告の出稿、人材採用や補助金の執行など未経験の業務も多数ある中で、3年目の大学統合時の経験を踏まえ、ゴールを見定め、逆算思考で業務合理化に努めました。
最初の仕組みづくりは骨の折れる作業ですが、一度作ってしまえば、自走しながら次第と洗練されていきます。最初に主体的に動くことで周りの共感や協力が得られれば、達成できることが増え、結果として働きやすい職場になっていく。そんな経験ができました。
また、新学部のプログラムの参考にするため学生の海外研修に同行した際、学生の発表資料作りを手伝う機会がありました。夜遅くまで議論する先生と学生たちの熱量が物凄く、その真摯な姿勢に感銘を覚え、大学で働く意義を体感できました。
財務課総務係長、予算係長、キャンパス整備企画課長など(21年目~) 未来の好きは誰にもわからない。食わず嫌いは損を生む
現在、キャンパス整備企画課長である私は、「キャンパスマスタープラン」の実現に向けて精力的に活動しています。このプランは、キャンパス内の施設環境の整備や活用の基本方針で、地域、産業、大学の“共創の場”を創出するため、民間企業に土地の一部を貸し出して得た事業収益も活用して、キャンパス環境面から大学の機能を強化するものです。ただ、事業期間はこの先70年。とても長く、今いる職員は誰も最後までは付き合えませんので、後任に継承されていくことを意識しながら事業の礎を築くことに注力しています。「お互いに教え合うことは大学業界の良いところなので、課題があれば他大学や外部専門家から学ぶことも考える」「強み分野は積極関与。弱み分野は他者に助力を求め、お互い様の協力関係を作り、チームで成果を目指す」など、私がこれまで経験から得てきたものを伝えつつ、安心してメンバーが各々の力を発揮できるような環境づくりを目指しています。
利益追求型のビジネスが性に合わないと思い大学職員になったのに、気づけば収益を増やす部署にいて、それにやりがいを感じている自分がいる。自分の可能性を決め付けず様々な分野を経験する中で、予想もしなかった出会いによって自分の適性が見えてくることもある。上司など周囲の人がちゃんと自分を見ていてくれて、様々な機会を作っていただいたおかげとも思います。国立大学は、頑張れる価値があると思える仕事と遭遇する場なのかもしれません。
メッセージ

教育と研究、これが大学の核です。そこに貢献できることに魅力や面白さを感じるなら、大学はきっとあなたを惹きつけてやまない職場になるはずです。学生や教員と直接関わる業務はもちろん、海外勤務、他機関への人事交流など、国立大学職員の道は、大学内に留まらず、外にも開かれています。法人化によって自由度は高まり、早い段階で責任ある仕事や職位を任される機会も増えています。国立大学での多様な仕事がある中で、皆さんにとって価値があると思える仕事と出遭えることを願っています。